はじめに
私は大学、大学院と進学し、両方で奨学金を借りていました。
奨学金を利用して進学してよかったと思っていますが、返済のことなど知っているようで全然知らずに借りていたとあとあとになってつくづく思いました。
この記事では、奨学金の借入・返済にあたり私自身が予め知っておきたかった情報を中心にまとめています。なお、大学と大学院で借りていたからこその情報もありますが、大学だけ奨学金を利用する(した)方に通じる話も多いかと思っています。この記事が誰かのお役に立てるようでしたら幸いです。
大学と大学院で両方借りた場合
- 大学院を卒業したら、大学と大学院の奨学金の返済が同時に始まります。(厳密には手続き次第なのですが、後述します)
- 毎月の返済すべき金額は大学+大学院の分です。大学のみで借りた人と比べて、大学院の返済の負担を考慮して毎月の返済する金額が少なくされていたり、その分、期間が長くなったりということは基本的にはないです。
- 繰り上げ返済も可能です。繰り上げ返済を申し込み際に、大学の分の返済にあてるか、もしくは大学院の分を返済するか、選択することができます。
私自身が色々と知らなくて勝手に勘違いしていました。大学の返済が終わったら大学院の返済が始まると思っていました。そして、大学だけで借りていた人と比較して、毎月の返済額は変わらず、年数が長くなるだけだと思っていました。
また、毎月の返済額よりも多めに支払って早めに返済を終わらせることができる、繰り上げ返済というシステムがあることを知りませんでした。毎月決められた金額を決められた年月で返すものだと思っていました。繰り上げ返済のことはホント早めに知っておきたかったです。
私の借入金と返済の詳細
私は「日本学生支援機構」で奨学金を借りていました。なのでこの記事も日本学生支援機構での返済についての説明になります。
大学と大学院、同時に返済が始まる理由
実は、大学と大学院の返済が同時に始まるというルールがあるわけではないです。
本来は大学を卒業した後に大学の分の返済が始まるのですが、手続きをしたら大学院進学を理由に返済の猶予が可能になるため、大学院を卒業したら、猶予されていた大学の返済と、そして大学院の返済が始まることになります。
そういえば大学卒業の際に、返済猶予の手続きした記憶があります。
なお、以下のように卒業したら翌月から返済が始まるわけではないです。
奨学金の返還は、貸与が終了した月の翌月から数えて7か月目から返還が始まります。
(例)3月で貸与が終了した場合
【月賦返還の場合】
10月(27日)が初回の振替日となります。
返還方式
私は大学・大学院ともに第二種奨学金で、「定額返還方式」のうち、毎月同じ金額を返還する「月賦返還」を選択していました。
その他、「所得連動返還方式」(所得に応じて月々の返還額が決まる返還方式で、平成29年度以降に第一種奨学金に採用された方のみが対象)や、「月賦返還」と「半年賦分」を合わせた「併用返還」などもあります。
返還方式について(定額返還方式・所得連動返還方式) | 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
定額返還方式(月々の返還額が一定の返還方式) | 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
大学
- 貸与月額:10万円
- 12ヶ月×4年間で、借り入れ総額は480万円
- 利率:0.8125%
- 月賦返還額(毎月の返済額):21,754円(最終回は21,996円)
- 月賦返還回数:240回(つまり20年)
この利率になった理由については、ちょうど私の頃は転換期だったようで今は採用されていないややこしい計算をしていたので説明は省略します。
大学院
- 貸与月額:10万円
- 12ヶ月×2年間で、借り入れ総額は240万円
- 利率:1.5%
- 月賦返還額(毎月の返済額):14,995円(最終回は15,087円)
- 月賦返還回数:180回(つまり15年)
決定した利率が返済終了まで変わらない「利率固定方式」と、市場の状況によって5年ごとに見直しされる「利率見直し方式」がありますが、私は「利率固定方式」を選択していました。
以下のページの、貸与終了月(私は卒業年月と同じです)に記載されている利率が適用されました。
平成19年4月以降に奨学生に採用された方の利率 | 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
私の場合は1.5%でしたが、上記のページのここ数年の数字を見てみると、だいぶ利子は低くなっているようです。
これまでと現在の状況
- 毎月約37,000円(大学21,754円+大学院14,995円)返済をしていました。
- 多少は繰り上げ返済をして、最近になってようやく大学院の方の返済が終わりました。
- 大学の分はまだ残っており、返済を続けています。
奨学金は地道に返済することになって長期間になるとは聞いてはいましたが、卒業が近くなって返済の手続きの書類を受け取って、まともに返済していたら20年もかかるとそのときに初めて知りました。40代までかかるとは…
返済期間はどうやって決まるか?
「奨学金返還年数算出表」(こちら)というものを使って、以下のように算出します。
返還期間(回数)は貸与総額および割賦方法に応じて決まります。
ア.月賦返還
貸与総額(借用金額)を「奨学金返還年数算出表」に定める割賦金の基礎額で割って得た返還年数(小数点以下切り捨て)の12倍した回数となります。
大学の返済期間の算出
大学の借り入れ総額は480万円だったため、「奨学金返還年数算出表(こちら)」の以下に該当します。
- 貸与総額(借用金額):3,400,001円以上
- 割賦金の基礎額:総額の20分の1(480万円÷20 = 24万円)
「返還期間(回数)」は、『「貸与総額(借用金額)を「奨学金返還年数算出表」に定める割賦金の基礎額で割って得た返還年数(小数点以下切り捨て)の12倍した回数』とのことですが、
- 貸与総額(借用金額):480万円
- 返済年数:480万円÷24万円 = 20年(回数は12ヶ月で12倍で240回)
とのことで、返済期間は20年となりました。
大学院の返済期間の算出
大学の計算方法と同様です。「奨学金返還年数算出表(こちら)」の以下に該当します。
- 貸与総額(借用金額):2,300,001円~2,500,000円
- 割賦金の基礎額:160,000円
上記に基づいて計算すると、
- 貸与総額(借用金額):240万円
- 返済年数:240万円÷16万円 = 15年(回数は12ヶ月で12倍で180回)
返済期間15年になります。
繰り上げ返済のこと
繰り上げ返済とは
これは知っている人からしたら一般常識だよと言われてしまいそうですが、繰り上げ返済という仕組みを知りませんでした。
奨学金に限ったことではなく、住宅ローンや自動車ローンなどにも通じる話です。多めの金額が支払えるときに支払うことで、トータルの返済金額が少なくなったり、返済期間が短くなったりします。
新卒から数年は自分のことだけにお金が使えていたし、ボーナスもそこそこあったし、そのときに繰り上げ返済を知っていたら、奨学金の返済に使っていたのになぁと思っています。
手続きについて
日本学生支援機構の「スカラネット・パーソナル」というWEBサイトから、ネット上で繰り上げ返済の手続きができます。スマホからでも手軽に手続きができるのはありがたいです。
- 「大学」と「大学院」の、どちらの奨学金を繰り上げ返済するか選択します。
- 私は、大学院の方が総額が小さいし、早めに終わらせられるものを先に完了したいと思い、大学院の方を優先的に繰り上げしました。詳しくは確認しませんでしたが、どちらを先に返済した方が利子の分が得になるかで判断するのもよいと思います。
- 繰り上げする「金額」か「回数」を選択できます。
- 100万とか200万とかまとまった金額がないと対象にならないかと思っていたのですが、そのようなことはありませんでした。私は少し多く支払えるときに、10万円とか20万円とかを繰り上げ返済するということを何度かしました。
- 補足で、以下の通り調整された金額になるので、10万円ぴったりというわけではないです。
繰上返還では、返還額の全額または一部を繰り上げて返還することが可能です。
通常の返還と同様に、現在ご登録いただいている振替口座からの振替となります(手数料はかかりません)。
一部繰上返還を希望する場合、繰り上げを希望する上限金額もしくは希望する繰上回数のどちらかを選択してください。
金額でのお申し込みの場合、希望金額内で繰上可能回数を計算し、金額を調整します。
- 繰り上げ返済をしたら、多少は翌日の返済額が減るのかなと思っていたのですが、全く変わらず「あれ?」と思いました。繰り上げた分、期間が短くなるとのことです。
一部繰上返還をした場合、繰り上げた分の返還期間が短縮されます。翌月からの返還は通常通りです。
割賦金額が減額されることはありません。
繰り上げ返済の例
繰り上げ返済については以下のように説明されています。
第二種奨学金の場合
繰上にあたる期間の利子はかかりません。ただし、据置期間の利子はかかります。
これはどういうことかというと、とあるときに私が大学院の奨学金を繰り上げ返済をしたときの詳細を記載します。20万円で手続きをしました。
返還回数 | 割賦金(円) | 元金(円) | 利息(円) | 据置期間利息(円) |
163 | 14,995 | 14,566 | 331 | 98 |
164 | 14,995 | 14,584 | 313 | 98 |
165 | 14,995 | 14,603 | 294 | 98 |
166 | 14,995 | 14,621 | 276 | 98 |
167 | 14,995 | 14,639 | 258 | 98 |
168 | 14,995 | 14,657 | 240 | 98 |
169 | 14,995 | 14,676 | 221 | 98 |
170 | 14,995 | 14,694 | 203 | 98 |
171 | 14,995 | 14,712 | 185 | 98 |
172 | 14,995 | 14,731 | 166 | 98 |
173 | 14,995 | 14,749 | 148 | 98 |
174 | 14,995 | 14,768 | 129 | 98 |
175 | 14,995 | 14,786 | 111 | 98 |
20万円繰り上げの申し込みをしたのですが、正しくは、次回に引き落とされる金額は最大で20万円にするという手続きになります。1番上の、163回分は、繰り上がったわけではなくて元々その月に支払うべき金額になります。なのでこの利子は支払うことになります。
「据置期間利息」については、例えば3月に終了したら7ヶ月後の10月に返済が始まるのですが、その期間の利子になります。「据置期間利息」と、元金は減額されません。
これらから、上表の赤字の数字を合計すると、192,391円となります。20万円で申し込みをしたら、20万円にもっとも近くなるように調整されて、上表の163~175回分が対象になったというわけです。
青字の数字の合計の2,544円は支払いをせずに済んだ金額になります。
じゃあこのとき銀行から日本学生支援機構に引き落とされた金額は赤字の192,391円だったかというとそうではありません。大学院の分を20万円で手続きをしましたが、大学の分は普通に返済がありました。上記の192,391円に、大学の月々の返済額の21,754円が加わって、この月は214,145円が引き落とされています。
どのくらいお得になるのか
上表では、自分の通帳から詳細を調べやすかった直近の繰り上げ返済を例としました。全部で180回ある返済のうち、163回~175回分になるので、終盤のものになります。
利子は175回分が111円となっています。
ここでの表には記載しませんでしたが、第1回は利子が3,000円、2回は2,985円、3回2,970円…となっていました。やはりできるなら早めに返済した方が利子の分はお得になります。
全期間の利子の合計は281,529円です。どんなにがんばってもこの金額を上回るほど減額されることはないです(参考までに、据置期間利息の合計は17,663円)。
上記は大学院で、大学の返済分については詳しい書類が見つからない(もらってなかったのか、私が紛失してしまったのかは不明…)ため申し訳ないのですが、繰り上げせずに返済した場合の合計は約520万円となります。据置期間利息の詳細が分からないので正確なことが分からないのですが、元金が480万円なので、利子で減額できるのは最大で40万円程度となるでしょう。
あくまで私個人の感想としては、利子で100万円くらいのイメージを持っていたので、思っていたよりも利子の金額は大きくないなと感じました。利子のことよりも、早めに返済することでそのお金を他の有意義なことに使えるようになるメリットの方が大きいのではないかと感じています。
また、何年かかけて100万円ためて一気に返済というのを何度かやるよりも、少し余裕ができたら少額でも早めに繰り上げ返済した方が理論上は減額できる金額は大きくなります。ただし、ちょこちょこやるよりも、まとまった金額を貯めて返済する方が計画的にやりやすいという人もいるかと思っています。
生活していく上で貯金も重要ですし、利子が安くなるからといってむやみやたらに早めに返済しようとしてどこかで行き詰ってしまうよりは、数年かけて無理なく計画的に返済していく方がよいのではないか、というのが個人的な意見です。
返済の計画
新卒時の支出
私は新卒で就職した際に、東京で1人暮らしをはじめました。
東京での1人暮らしはどれほど生活費がかかるか、検索すると色々な例が出てくるのですが、私の当時の感覚に近いものを引用させていただきます。
東京で一人暮らしをする場合、一ヶ月で約15万円ほどの費用がかかります。
【東京の一人暮らしでかかる費用の目安(一ヶ月あたり)】
- 家賃:88,000円
- 水道光熱費:9,732円
- 通信費:6,773円
- 食費:40,299円
- 家具、家事用品費:5,617円
自炊して食費はもう少し抑えていましたが、別途、衣服費や化粧品代などの雑費もありますので、15~17万円くらいだったと思います。
15万円だとして、プラスして奨学金の支払いが私の場合は毎月約37,000円となりますので、トータルで187,000円が毎月出ていくことになります。
新卒時の収入
新卒の初任給については、以下のデータでは「大学228,500円」「大学院267,900円」となっています。
平均なので業種などによって違ってきますし、またこれは「額面」であって「手取り」ではないため注意が必要です。多くの求人サイトなどでも「額面」が紹介されていますが、実際に手元に入ってくるのは所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれた「手取り」になります。
額面からどれくらいの金額が差し引かれて手取りとなるかは条件によって異なりますが、「初任給の平均手取り額は額面給料の80%程度」という情報もありましたので(参照元)、こちらを参考にして計算すると、「267,900円×0.8=214,320円」になります。
毎月の手取りが214,320円で支出が187,000円だと、余りは「27,320円」となります。
あくまで初任給の平均値だし、目安程度に考えていただければと思います。
当時の私自身はもう少し手取りも安かったと思っており、また毎月の支出とは別に、年に数回、帰省するために交通費がかかっていたので、かなりギリギリでした。元々贅沢をするタイプではなく、社会人になったら経済的な面ではかなり楽になるだろうと思っていました。甘かったです。
ボーナスがあったから何とかなっていた部分もあるのですが、会社がボーナスを支払うことは必須ではないとあとあとになって知りました。結局は奨学金を含めてクレジットカードや光熱費の支払いが滞るようなことはありませんでしたが、予め色々とちゃんと考えておくべきだったなと思っています。
返済計画はどうすればよかったか
私の例は都内で1人暮らしというもっともお金がかかるパターンだし、奨学金も大学と大学院で毎月10万円借りており返済額も大きい方だと思います。
私の例がすべての人に当てはまるわけではありませんが、もし自分がやり直せるのであれば、以下のような計画にしたいです。
- 入社してしばらく、4~6月は、新生活の準備をして慣れることを優先する。
- 7~9月はまだ奨学金の返済が始まっていないので、余ったお金は10月に繰り上げ返済をするために貯めておく。
- 10月は、通常の奨学金の支払いと合わせて、貯めたお金から3~4回分の繰り上げ返済をする。
- ボーナスが入ったら、半分以上の金額は繰り上げ返済にあてる。残りは貯金と、お世話になった家族への恩返しに使う。ボーナスが出たからといって自分のために使うのは数千~数万円程度にする。
- その後は、最低月1万円は貯金する。ボーナスでそこそこの貯金ができたはずなので、目先では50万円貯金することを目標にする。
- 余裕ができたお金の中から、1回分でも繰り上げ返済ができそうであれば繰り上げする。
- その後のボーナスが出たら繰り上げ返済に使う。お給料が上がったら、半分は貯金の金額を上げることに、もう半分は繰り上げ返済に使う。
シミュレーションのサイト
日本学生支援機構では、いくつかの質問に回答することで返済額などを試算することができるWEBサイトがありますのでリンクを掲載します。
奨学金貸与・返還シミュレーション|独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
サイトに登録しないと使えないかなとか、正確な数字を入力する必要があるのかなとか思ったのですが、そのようなことはなく気軽に使えました。(これから返済を開始する人向けなので、返還開始年月とか私自身の正しい数字を入れることができなかったのですが、そこは適当に入力したりしました)
すごく個人的な話(進学の理由と社会人になってから)
大学に進学した理由
ここからはだいぶ個人的な話をつらつらと書きますが、要は「自分は大学に行ってよかったけど学歴がすべてではない」というお話です。
元々私はあまり大学に行く気はありませんでした。真面目な家庭でしたが、家族や親戚、学校以外の知り合いはほぼおらず狭い世界で生きていました。それで、大学はお金持ちでよっぽど勉強が好きな人が行く場所だと思っていました。
ところが、あるとき親が「学歴によって生涯年収の平均はだいぶ違うらしい」という話をどこからか聞いてきます。衝撃でした。今となっては私も教育格差と世帯年収の相関などの話題をよく耳にしますが、当時は教育を受けたくても受けられないというわけではなく、そもそも学歴が年収に影響があるということすら知らなかったのです。
高校は地元の公立の進学校を選択し、でもやりたいことが分からないので受験勉強に身が入らず、結果はボロボロで志望校としていたところには全然手が届きませんでした。でも高いお金をかけて浪人できるような経済状況ではなく、私立に行くという選択肢はなくて受験していなかったため、失意のまま後期日程で受験した第3志望の大学に進学しました。
夢と希望に満ちた大学生活のスタートからはほど遠い状況でしたが(そもそも大学のことをあまり知らなかったので「憧れのキャンパスライフ」みたいな概念もなかった)、大学から人生が変わりました。世界が広がりました。地元を離れて1人暮らしで、色々な人を知ることができたということが1番大きかったです。
大学生と積極的に関わる機会がある社会人は、バイト先の社員さんなどもいますが、共同研究のためとか、自治体の関係者とか地域のボランティアといった方もいます。私は地方の大学だったこともあり地域に密着した取り組みをされている方とお話させていただく機会に恵まれました。全国区の大学になると、国や国際的なプロジェクトとか、大手メーカーとの共同開発とか、そういうことに関われるチャンスも多いのではないかなと推測しています。
中には本当に頭が下がるくらい、世の中のために何ができるか考えて活動していらっしゃる方もいました。そういう人たちを知らないまま社会人になっていたら、世の中なんて悪い大人ばかりなんだろうという価値観だったかも知れません。
大学院に進学した理由
志望校ではなかったものの貴重な体験ができた大学生活でしたが、大失敗したことがあります。それが「研究室選び」です。
私の学科では、1,2年生のうちはそこまで専門性が高いわけではなくて、大学3年生から研究室に所属となってそこで専門的なことをやっていくというシステムでした。
やってみたいことは漠然とあって、それなりに事前に調べて研究室を選んだつもりでしたが、いざ入ってみて現実を知りました。こんなに何も教えてくれない研究室だとは夢にも思いませんでした。実際に「夏休みの自由研究レベル」と言われたことありました。もっと事前に調べることができたのだろうなという気もしますが、でも、就職で「結局は会社に入社しないと分からない」というのに近いと思います。
大学ではサークル活動ではすごくいい経験をしたのに専門性は何1つ身についていないというのもどうかと思い、でも進学するとさらにお金もかかるしとずいぶん悩んだものの、結局は就職ではなく大学院を選びました。
他の研究室に転籍したり、別の大学の大学院を受験するという選択肢もあったのですが、でもそこまでエネルギーをかけてやりたいことが明確ではなかったというのが正直なところで、不満もありつつも引き続き同じ研究室に所属することにしました。自力でなんとかしようと思っていました。
そして大学院生活が始まると、幸か不幸か、大学の偉い人たちが「環境問題に学生が社内外で自主的に取り組むプロジェクトをやりたい」と考えて、分野的にうちの研究室が1番近かったのでお声がかかりました。大学ではサークル活動は充実していたけど大学院では専門性を身につけたいと思っていたのですが、結局、大学院もサークル活動っぽいことが充実した生活になってしまいました。。。
まぁ私の場合は極端ですし、自助努力が足りなくてこんな状況でもなんとか研究テーマを見つけて取り組むというのもできたかと思っています。とは言え、大学院で100%学問や研究に取り組めるわけではなくて、後輩の指導やら教授から依頼された雑用などで忙しいというのは珍しくはない話です。
余談で、その時に立ち上げたプロジェクトはその後も続き、自分が卒業したあとは、夏休みはみんなで海に行ったりするリア充サークルになってました(笑)
最近SNSを見にいったら情報が更新されていましたし、サークル本来の活動もがんばっているようです。
学生に学びの場を与えることに寄与したかも知れませんし、サークル内で知り合って結婚する人もいるので、人の人生に影響を与えることができ、自分が大学院でやったことは意味があったのかも知れません。
一方で、大学院のときに教授のかばん持ちである国を訪問したことがあります。
そこでお話させていただいた方が、貧しい地域の出身で家族を楽にしたいから勉強して就職したい、ゆくゆくは奨学金で日本に留学する予定だと話していました。そこまでの決意もなく奨学金で進学した自分はものすごく申し訳ない気持ちになりました。
そして彼はその後、実際にうちの大学に留学にきました。
やはりこのような方が、奨学金で進学する人としてあるべき姿だと思います。
社会人になってから
就活では自分は研究職などにはエントリーできる状態ではないと思い受けませんでした。そして、別分野からも学生を受け入れているシステムの会社に就職しました。
システムは比較的、実力主義の世界です。その分野でトップの大学を卒業していて、めちゃくちゃ優秀で頼りになる人もいれば、大学ではシステムをやっていたわけではないけど社会人になってから覚えたとか、大学には行っていないけれどゲームが好きだったなどの理由で小さい頃からプログラミングをしていたとかいう人でも、すごく仕事ができて必要な人材として高いお給料をもらっていることもあります(会社の文化などで違いはあるかと思いますが)。
また、仕事で超がつくような高学歴の人と関わることもあります。
いい大学を出て、社会人になってからもその分野の新しい知見を学び続けて着実にキャリアを積んでおり、責任が重い仕事をしていて人柄も素晴らしい人を見ていると、学歴って重要なものではあるけどその人の一部でしかなく、こういう人は高いお給料をもらって然るべきだよなと思います。
なお、そういう人からも「大学まで何をしたいか分からなかった」という話をちらほら聞きます。
そして、いい大学を出てるかも知れないし優秀かも知れないけど、この人とは関わりたくないという人もいます…
私自身、大学院を卒業してその道の専門職についたわけでもなければ、システムの仕事も極めているわけではないので、正直なところ、人から羨ましがれるほど高い収入ではありません。派遣社員だったこともあり、そのときは生活するのがギリギリで、毎月、お給料日前には残高不足にならないか通帳を確認するような生活でした。
とは言え大学院まで奨学金で進学したら、人の何倍も年収のいい専門職に就かなければ返済できないわけではなく、「人生を棒に振ってでもやりたいことがないと奨学金で大学に行くべきではない」というほどのものではないと個人的には思っています。
「奨学金は借りるな」という意見もありますし、返済を延滞していたらクレジットカードが利用できなくなったという話も決して都市伝説ではありません。が、少なくとも私は、返済は続いていますが1度も延滞をしていないこともあってか、奨学金が理由でクレジットカードや住宅ローンなどを断られた経験はないです。
条件が複雑になりすぎるので、ここでは1人暮らしだった場合に毎月の返済ができるかという観点で記事を書きました。今は結婚しており二馬力で、将来や老後のための資金も蓄えている状況です。蓄える余裕はありますが、でも余り過ぎることはないしやっぱりお金は大事です。
奨学金を利用して大学や大学院に進学して、自分なりに努力したとしても、周囲の環境だったり運の部分もあって必ずしも希望する道に新卒で進めるわけではないという現実もあります。
それでも私は(大学院は微妙ですが大学には)進学して本当によかったと思っています。そして大学卒業後に専門職に就いていたら幸せだったかというと必ずしもそうでもなかっただろうなということも思っており、今後の自分のやりたいこと向けてがんばっている最中です。
卒業後は返済があることを考慮しながらも、前向きな将来に向けての選択をしていただければと思います。
※記事執筆時の2023年に日本学生支援機構をはじめ各種サイトを調べたときの情報となります。最新の情報は公式サイトなどをご確認ください。また、私の個人的な例を記載しておりますので、すべての人に当てはまるわけではないことをご了承ください。この記事は情報提供を目的としており、奨学金を推奨することを目的としているわけではないため、奨学金の借入については最終的には自己判断していただくようお願いします。